その後は何事もなく楽しい日々を過ごし、あたしたちは高校一年目の夏休みに入った。
「絢音〜?髪できた〜?」
「ママーっ!もう少し〜っ」
7月の最後の日、今日は夏祭り。
あたしは浴衣を着て行くために、髪を浴衣に似合うようアレンジ。浴衣はママが着させてくれる。
「蒼は浴衣、着ないの?」
ダラリとした姿勢でソファーに座り、テレビを見ながらくつろぐ蒼。
「俺、浴衣ねぇもん…いいよ普通の服で」
「チェッ…。蒼の浴衣姿…見たかったぁ…」
小さい時以来、蒼の浴衣姿を見ていない。
あの時の蒼、可愛かったなぁ…
いま浴衣着たら、絶対カッコイイのに……
「ほっぺ膨らませてねぇで、早く着替えて来いよ。待ち合わせ遅れんぞ?」
「…はぁーい」
チラッと時計に目をやると、いつの間にか時間が過ぎていたことに驚いた。
「やっば…!ママー!着せてーっ!」
待ち合わせまであと20分。
「あんまり遅かったら絢音のこと置いていくかんな?」
「蒼のバカー!待っててよぉー!」
出掛ける前から、慌ただしくて汗びっしょりだ。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)