蒼の異変に気づいたのは、その日の夜のことだった。




お風呂から上がったあたしは、髪をタオルで拭きながら、部屋の前の廊下を歩いていた。




…蒼の部屋のドアが少しだけ開いている。




「………うん…わかってる……」




部屋から、蒼の話し声が聞こえてくる。




「……わかったって……じゃ……ピッ…―――」




ドアの隙間から部屋の中を覗くと、蒼は携帯を見つめたまま、何か考えている様子だった。




「…蒼?」




「うわっ!!ビックリさせんなよっ」




「ごめんっ。誰かと電話してたの?」




「ん?あぁ…友達」




蒼は、目を逸らして言った。




「そっか……あっ…お風呂入っていいよ?」




「うん」




最近、蒼がこそこそと誰かと電話で話しているのは知っていた。


だけど、今の反応。
なんか怪しいんですけど。