「美々…おまえに何があったか、俺は知らへん…。せやけど、こんな暗い部屋で一日過ごして楽しいはずないやろ?」




「遊也…もぉ…いいから……やめて…」




美々ちゃんが…泣いてるの…


もう…やめて…




「…時間はどんどん過ぎていくんや。後から後悔したって戻れへん。今日も二度とないんや…高校生活も…青春も今しかないんや……」




遊也は、しがみつくあたしの腕を振り切り、美々ちゃんの両肩を掴む。
美々ちゃんの逸らそうとする目をまっすぐに見つめていた。




「……泣いてる時間…もったいないで?美々…どーせ同じ時間過ごすんなら、泣いてるより、笑ってた方がええやんか」




遊也は優しく微笑み、美々ちゃんの涙を指で拭った。




「…なんなのよ…アンタ……」




「なぁ…美々…悲しいこと忘れ去るぐらい、俺らみんなで楽しいこと、たっくさんしようや…」




「悲しいこと…忘れるくらい…?」




「あぁ…そうや」




遊也の笑顔を見て、美々ちゃんはコクンと小さく頷いた。




「俺、遊也や。よろしくな、美々」




「……さっきも聞いたよ」




「アハハ…そやったな〜」




美々ちゃんは、遊也に抱きしめられたまま、泣いていた。




ひとつ悲しいことがあったら



ふたつ楽しいことをすればいい




二度とない時間を

今日…いま、この瞬間を




笑顔で過ごせるように




悲しみは、笑顔で消してしまえばいい




遊也はそう、あたしたちに教えてくれたね