「美々…おまえ、絢音の言うとること、わからへんのか?」




「アンタなんなの?何が言いたいの?」




遊也は、美々ちゃんに近づき、包帯をしていない方の手首を強く掴む。




「大切なモノは…一つじゃないんじゃい…!」




美々ちゃんの目を見つめて叫ぶ遊也の表情は、とても悲しそうで。あたしは顔を背けた。




「なぁ…美々、おまえ…あんなに心配してくれとる母ちゃん、大切じゃないんか?」




「アンタに関係ないでしょ?」




美々ちゃんは掴まれた腕を解こうと必死にもがくが、遊也は決して離さなかった。




「アホか…関係あるんや。今日からおまえと友達になった言うとるやろ?友達の心配して何が悪いねんっ」




「……あたしは、アンタなんかと友達になった覚えないから」




美々ちゃんと遊也はにらみ合い、少しの間沈黙が流れた。




「…大切なモンに、気づけるだけ幸せなんや。自分で大事にすること、できるんやから…。大切やって気づく前に死なれたら…失ってから気づいたって遅いんや…」




遊也…智也やお母さんのこと言ってるんだね




「大切なモンは…ひとつやないねん…」




遊也は美々ちゃんの手をそっと離した。




「絢音が美々のこと、大切やないって言うたか?ちゃうやろ?おまえと同じように、絢音もおまえのこと想っとんねん…」




もういい。やめてよ。

遊也…美々ちゃんを責めるなんて、やめてよ。


あたしは、遊也の腕にしがみついた。




「もう…やめて…お願い…遊也……」