高梨の家を後にし、俺たちは黙り込んだまま歩いてゆく。




慰めの言葉も出てこなくて、元気づけることも出来なくて。


俺たちは自分の無意味さを教えられただけのような気がして。




ふと見上げた空は、夕日で橙色に雲まで綺麗に染まっていた。




「じゃー俺、こっちだから」




ケンは曲がり角で立ち止まり、浮かない顔で俺たちに手を振って帰っていった。




ケンと別れ、俺と絢音は少し離れて歩いてゆく。




斜め前を歩く絢音の背中は、とても小さく弱々しい。




「なぁ…絢音」




返事もしない絢音。高梨に会って悲しいのはわかる。けれど、また傷ついているのかと思うと、俺はたまらなく辛かった。




「…何で俺のこと、避けるんだ…?」




絢音は、俺の言葉に立ち止まる。




「…避けてなんか」




「俺の気持ちが…そんなに迷惑か…?」




絢音は振り向き、俺の前に立った。




「迷惑なんかじゃ…!…迷惑かけてるのは、あたしのほう…」




「…んなことねぇよ」




「あたし…蒼のこと傷つけてばっかりなんだもんっ」




俺は絢音の腕を引き寄せ、抱き締めた。




「蒼…」




「もう…黙れよ」




ただでさえ、俺だって高梨のことは辛いんだ。