―――…キーン…コーン……カーン…コーン
休み時間の終わりのチャイムが、校内中に鳴り響く。
「まぁこれも何かの縁ちゅーことで、よろしく頼むわ」
遊也は、タバコの火を地面に擦り消し、背伸びをしながらゆっくりと立ち上がった。
「俺なぁ、引越し手間取って、学校今日から通い始めたんや。入学式間に合わへんかって…タダでさえ目ぇ付けられてると思うんや。高校生活はマジメにサボるつもりないねん。ほな教室行くで…」
去ろうとする遊也を、あたしは呼び止めた。
「あのっ…!」
「何や?絢音…」
振り向いた彼の笑顔は、やっぱり智也にそっくりで、胸が痛んだ。双子だから似ているのは当たり前なんだけれど。
「何で…あたしのこと?」
…智也じゃないのに、何であたしを知ってたの?
「…智也から死ぬ前に、絢音のこと聞いとったんや…。おまえに逢いたかったんや……逢えて嬉しいでっ」
そう言って、遊也は屋上を出て行った。
5年前の夏の終わり……
あの日の光景が、鮮明に脳裏に浮かぶ…―――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)