絢音の部屋のドアをノックしても返事はない。




――ガチャ…


そっと扉を開けると、部屋は真っ暗だった。




「…絢音…大丈夫か…?ココア持ってきた。飲めよ…好きだろ?」




絢音は、ベッドの上で静かに泣いていた。




ココアの入ったコップを、机の上に置き、俺もベッドの上に座った。




「絢音…聞いたよ。高梨のこと…。ケンから連絡あって命は助かったらしい…って聞いたか…?」




絢音は膝を抱えて泣いたまま、俺を見ようとはしない…。




「絢音…」




俺は、絢音の肩にそっと手を伸ばした。




「…触らないで…出て行って」




そう言って涙を流して絢音は俺を睨み付けた。




「絢音……」




「あたしが…殺した…」




絢音の肩が震えている…。




「ちが…っ」




「…あたし…が…殺したの……」




絢音の震えは徐々に強くなってゆく。




「違う!絢音…おまえ混乱してる。あの時とは違うっ!」




俺は、絢音の両腕を強く掴み、真っ直ぐに見つめた。




「あたしが…あたしが……」




「死んでないっ!高梨は生きてる…っ」




俺は、絢音を抱きしめた。