部屋で俺は、絢音の帰りをずっと待っていた。




――ガチャ

ドアの開く音がして、俺は急いで部屋から出ると、廊下には俯く絢音がいた。




「絢音…?」




絢音に声をかけるが、俺の顔も見ず、絢音は何も言わないままは、自分の部屋に入ろうとする。




「おい…っ」




なんだか様子がおかしいと思い、俺は絢音の腕を掴んだ。




「………あや…ね…」




「……なに…?」




顔を上げた絢音の目を見て、俺は一瞬固まってしまった。




「いや…何でもない…」




俺は絢音の手をそっと離した。




あの時と同じだ……あの時の絢音の目と…同じだった…




哀しさに溢れたうつろな目。まるで目の役割は何も果たしていないような、沈んだ瞳。




俺は…呆然と立ちすくむ…。




何があった…?