ケンは、怒りのあまり頭を抱え、しゃがみこむ。




「ケンは…高梨のこと、支えてやって…?俺、いま身動きできないし…」




「言われなくても…そうする」




「頼むよ…」




それだけ言って、俺はその場を去ろうとした。




「蒼…!」




ケンが俺を呼びとめた。
納得できない…そう顔に書いてあるようだ。




「大丈夫か…?おまえは…。絢音っちのこと…」




「絢音のためだ…」




「蒼は…絢音っちのこと何もわかってねぇな…」




ケンがひとりごとのように、つぶやく。




「いや、何でもない。行けよ…」




「またな」




俺はケンを置いて校舎の中へと戻って行った。







絢音をどれくらい好きか


そんなものわからない。




ただ絢音がこれ以上

傷つくのも

悲しむのも




見ていられない。




俺の気持ちなんて

後回しでいい。