「いってきまーす…」




蒼とあたしが玄関を出ると、家の前で、腕を組み塀に寄りかかって立つ栞の姿があった。




「な、なんで栞がうちの前に…?」




「絢音ちゃんに用があるわけじゃないの。蒼くんに話があるから…」




栞は、蒼の腕を無理やりに引っ張って歩いてゆく。




「蒼…っ!」




あたしが叫ぶと、蒼は振り返りながら言った。




「ごめん…絢音。俺も夏川に話あるからさ…。おまえ先に行って…」




何それ…なんの話…?


それに栞のあの余裕な笑みは…なに?




あたしも美々ちゃんのことで、栞に聞きたいことあるのに…




「わかった…!あたし美々ちゃんの家に寄ってから学校行くから…!」




あたしの声を聞き、蒼は頷きも何もしなかった。ただあたしの目を見つめたまま、栞と共に歩いてゆく。




二人の後ろ姿が見えなくなるまで、あたしはその場から動けなかった。