隣同士の家に生まれ、年も同じ。


物心がついた頃には、俺の隣には、いつも絢音がいた。




俺の隣で、いつも笑ってた。




幼い頃は、一緒にいるのがあたりまえで、俺にとっては兄妹のような家族みたいな存在になってた。




けど、小5の時、ある事件が起きた。




それをきっかけに、俺は自分の気持ちに気づいた。




“絢音を好きだ”

兄妹みたいとかじゃなくて、家族みたいとかじゃなくて…そう、女の子として。




でも、それからもずっと…

俺は“幼なじみ”としてしか、絢音に接することができなかった。




――…新しい教室は、木の香りがした。俺と絢音は教室の窓から外を眺める。




「蒼…すでに人気だね」




隣で絢音が不満そうな顔で呟く。




「何が?」




「入学早々、女の子たちから騒がれてんじゃん。これだからモテる男は…。てか実感ないわけ?」




「別に…興味ねぇもん」




おまえ以外…って言えたらなぁ……とか、心で呟いてみるけど。




絢音が俺の気持ちに気づくことは、絶対にない。




なんせ鈍感だし



何より俺を男として見ていない。




だって、ノーブラで上下スウェットで平気でいつでも俺の部屋に堂々とやってくる。それが証拠だ。




だから俺は“幼なじみ”として過ごすしかなかったんだ。