「こっちへ登ってきてごらん。」

呆気にとられていて、言われるままに、彼の手を借りて、屋根に登った。

「そこに、空のくすんでいるのが見えるだろう?」

「あ…」

そこには見たこともない光景が広がっていた。

真っ青だと思って見ていた空の、一部分だけ、鉛色のような、何とも言えない色を混ぜ込んだようになっているところがあった。

「見た目はペンキで塗って取り繕うことができるんだけどね。

どうやら運よく、くすませてしまった元凶に会うことができたみたいだ。」

「…もしかして、あたしなの?それ。」

「極度に気持ちが落ち込んだ時、もしくは長期間にわたって気分がすぐれない時、その人の近くの空はくすんだり、乱れたりしてしまうんだよ。」

ええ?

なにそれ。

そう思った瞬間、空のくすんでいるところが、ぐにゃりと曲がった。

どうやら本当らしい。

「これから、きみのケアをします。」