少女とフロルは、聖堂に続く一本道を歩いていた。

湿った風が、丘の上から吹いてくる。

風をはらんで、少女の赤い髪が大きくひるがえった。

少女は、左手でそっと風に飛ぶ髪を押える。

2人は、一歩一歩、踏みしめるように歩いた。

少女は、道の中ほどで一度だけ後ろを振り返った。

見おろすと、闇に沈んだ街がそこにあった。

ワルツを踊る人々が灯した明りが、ちらちらと搖れている。

「リーファ、こっちだよ」

フロルにうながされて、少女は再び歩き始めた。

そして、二度と振り返ることなく聖堂の庭を抜け、大きな門をくぐって中へ入って行った。