少女は立ち止まった。

「おばあさん?」

老婆の様子が変なので、思わずしゃがみこんだ。

「どうしたの? みんなといっしょに踊らないの?」

問いかけて、顔をのぞきこむ。

老婆の落ちくぼんだ眼は、うつろに淀んでいた。

焦点が定まっていない。

いつもなら優しく見える深いシワも、不気味なミイラのようだ。

「リーザ…。かわいいリーザ。花冠を編んであげると、はしゃぎ回って喜んだ愛しいリーザ。利口で素直で、口答えひとつしなかった自慢の娘だったのに。リーザ…。かわいいリーザ。ミモザの森でいなくなった…」

老婆は、そんなことを繰り返していた。