今夜のストリートは、ワルツを踊る人々であふれていた。

大人も子供も、男も女も、着飾り、装い、軽やかに舞い踊る。

少女は、人々の間を縫うようにして路地を進んだ。

ときどき誰かにぶつかったが、相手は皆、知らん顔である。

人々は、夢見が紡ぎ出した夢に浮かれているのだ。

少女は、並木を抜けて道のつき当りの階段を登った。

長い石の階段だ。

石段を登ると、13段ごとに踊り場がある。

その片隅に、彼女は、いた。

花売りのシンディ婆さんである。

老婆は、石畳の踊り場の隅で、何事かぶつぶつとつぶやきながらうずくまっていた。