* * *
俺は、地獄を垣間見た男だ
死ぬる時、人は今までの思い出のフラッシュバックをするらしい
――ああ、したさ
頭の中に刻んだ幾多の思い
どれもが素晴らしく、このまま目を瞑りそれを一生見たくもなる
眠いんだ
凍てつく寒さは痛みを宿すが、いつからか、何も感じなくなったんだ
相変わらず体は震えるが、何だか痙攣めいた感じになっていく
――寝てしまえ
そう頭の隅が言った
丁度いい、俺もそうしたいと思っていた
けど、思うんだ
その前にやることがあると
それをやらずにして、俺は終われない
いや、終わってはいけないんだ
重い瞼(まぶた)を無理やり開け
倒れそうになる体を意地で立たせ
寒さに挫けそうな心を根性で奮い立たせ
俺は、地獄から帰還した


