ふわふわと、白い湯気が舞い上がる。

ミルクたっぷりのココアをずっと見つめている私。
真ん中に入れられたマシュマロは、沈んだり浮いたりを繰り返す。


「飲まないの?」


そう言う、私の彼氏。

今日は、バレンタイン。
チョコレートを渡すタイミングが、みつからない。

去年は結局渡せなかったから、今年こそはと思ってるんだけど…こういうのって変にタイミングを見計らってしまうんだよね。


「あ、そーだ」


思い出したように席を立った彼は、自分の部屋に向かって行った。
戻ってきたかと思うと、なにやら持っている。


「ハッピーバレンタイン」


そう、笑って言って私に四角い箱を差し出す。
これって…バレンタインのチョコ?


「今ハヤリの逆チョコ! 開けてみて」


包装紙を綺麗にとっていき、蓋を開ける。


「…ミルクココアセット」


「好きだろ? ココア」


「…うん」


嬉しい。

でも、タイミングを気にしてチョコを渡せなかったせいで先に渡されてしまった。
このさい、タイミングなんて気にしてる場合じゃないか。


「あの、私も…」


そう言って、自分のカバンからチョコの箱を取り出す。
彼は少し固まったあと、笑顔になった。


「マジで? 嬉しい!」


嬉しそうに笑いながら、チョコを受け取る。
リボンをほどいて、箱をパカッと開ける。


「よし、一緒に食べよう! ココアも入れなおしだね」


「チョコレート食べるのに、またココア飲むの?」


私がクスクス笑うと、彼も笑った。


「いいじゃん、好きでしょ? ココア」


「うん」


「俺も好きだし」


「そうだね」


「お前が一番、好きだけど」


「うん…って、えっ!?」


突然言われた事に驚いて、顔をアングリさせる。
彼は、してやったりな顔をしていた。

顔を真っ赤にした私に、あったかいココアを差し出してくれた。


「ハッピーバレンタイン」


彼はそう言って、私のマグカップと彼のマグカップをコツンと乾杯させた。




-END-