ヴィナス・アプロの伝言(メッセージ)


「あの、雄一君……。手……」


私はずっと握られてる右手が気になって、雄一君に声を掛けた。


「ん? ああ」


一瞬、手を見たけど、ぶっきらぼうにそう言うだけで、手を離してはくれない。


今日の雄一君……珍しく、ご機嫌斜めだ。


私がそう思ってるのに気付く筈もなく、雄一君はブツブツと呟いてる。


「今日目を覚まさなかったら、入院しなきゃいけなかったんだぞ。
 俺なんか、このままずっと目を開けないんじゃないか、と思って、気が気じゃないのに、由紀先輩はあっけらかんとしてるし……ったく」



ああ、そっか。


雄一君、私のこと、心配してくれてたんだ。


今まで神経が張り詰めていたから、その反動でイライラしてるんだね。


2日半、だもんね。


えっ?
2日半?


私、そこまで思ってから、あることに気付き、カレンダーを見る。


やっぱり。