ヴィナス・アプロの伝言(メッセージ)


「あの」


私が泣かせた、って誤解されたら嫌だから、状況を説明しようとしたら、雄一君……。



「大丈夫か?」



そう彼女に声を掛け、次に、私に理由を訊くんでもなく、彼女の方へ近付いて行った。



訊かない、の?



この状況の、理由……。



「雄一君」
「お〜っす」


私のセリフと、今入って来た川井君の声が重なる。


「あれっ、何、この雰囲気。
 なんだ、浅沼、また泣いてんのか?
 いい加減、その癖、直せよ」

「癖?」

「ああ、こいつ、俺の中学ん時の後輩でもあるんだけど、何か少しキツイ事言われると、すぐ『嫌われた』とか『怒られた』とかって、泣き出すんだぜ」


雄一君の問いに、川井君が答えた。