「純一、お前に関する噂がいろいろ飛び交ってるんだが…

………聞きたいか?」



麦茶を片手に問いかける勇人。


いや、聞かなくてもなんとなくわかる。


お前が哀れんだ眼差しで俺を見るなんて滅多にないからな…



「謹んで遠慮させていただく」



そう言うと、勇人はちょっと残念そうな顔をした。


いや、お前案外楽しんでる?


そんなに噂話したかったのかよ。


ううむ…一度こいつの情報網を探ったほうがいいのかもしれん。



「はい、先輩。

あーん………」



「なっ…!?

ちょっ、ちょっと待て!!
何故そうなる!?」



「ダメ…ですか?」



「ぐ………」



うるうると瞳を潤ませる千鶴。


いや、嫌とかじゃなくて、ああ、まあ嫌は嫌なんだけど………




「………!?」



ふいに感じる視線。


な、何だこの威圧感…


まさか、これが俗に言われる殺気とかいうやつか?



「いってぇぇぇーー!!!

な、何だ!?
何故、突然足に激痛が!?」



「あら、どうしたのかしら、お兄様、おほほほほ」



高らかに笑う美波。


ああ、なるほど。


俺の足を思いきり踏んづけたのはこいつか…


それにしても、足の小指をピンポイントにノールックで踏みつけるとは侮れん。