妹なんていらない

「………って、俺は何を考えてんだ」



頭をかき、台本を閉じる。




俺は受験生だ。


恋愛だの演劇だの、そんなのにうつつを抜かしていられない。


だから、こんなことを考えている暇なんてない。



「……………」




時計を見た。


いつの間にかそんなに経っていたのか、現在時刻は6時。


夕食の時間まで勉強するとしたら一時間弱、といったとこだろう。



「………一時間ちょい、か」



いすの背もたれに体を預け、天井を仰ぎ見た。


そして、軽く背伸びをする。





「勉強…しないと………」




―これはチャンスなの!
これを生かしたいの!―



「いけない…んだけど………」



―………練習に付き合って―



「………


………はあ。

ああもう…仕方ねぇなあ」



俺は教科書をしまうと、台本に目を通し始めた。


ふと、雨宮の言葉が蘇り、ちょっと気まずい気持ちになる。



「たしかに………美波に甘すぎるのかなあ、俺………」



台本を読みながら、ため息をついた。