それは夏休みがもう少しで始まる、というころのことだった。



セミが無駄に鳴き、プール開き、海開きがあちこちで行われたときのことだ。



俺は下敷きで顔を扇ぎながら勇人と雑談をしていた。



俺と勇人の雑談は基本的に勇人が話題を振り、それを俺が軽く受け流したりつっこんだりの簡単なものだ。



今日もそんな感じで会話はそれなりに弾んでいた。



美波が好きなのは誰か知らないのか、とか。
(一瞬焦ったがなんとか切り返した)



千鶴は意外にモテる、とか。
(こいつ、年下が好みなんだろうか)




そう、いつも通りだった。





「初めまして、雨宮薫です。

あと数ヶ月と短いですがよろしくお願いします」




こいつが現れるまでは、だが。