仕方なく私は立ち尽くしていた。

下を向いた華兎が走って近づいてきて、

私に気づいてしまったみたいだった。



ヤバい……



「聞いてた?」


静かな声で華兎が言った。

泣いていたのか目の辺りが赤く、少し鼻声だった。

その静かな迫力に私は首を横に振ることしか出来なかった。


「そう…」


それだけ言うと、華兎は教室に戻っていった。


どうしたんだろう…


そう思ったけど、下手に首をつっこんではいけない。


どこかでそう思っている自分がいて、

ただ、華兎の後を辿って、教室に戻ることしか出来なかった。