「あたし走って帰るね。
そんな遠くないし」
「え、でも…
あ!あんなデカい家に
住んでんならさ、
誰かに迎えに
来てもらえば?」
「今、お父さんも
お母さんも
お兄ちゃんも仕事」
「じゃあ
お手伝いさんとかは?」
「いや」


わざわざ呼んでまで
使用人なんかと
会いたくない。


「うーん、じゃあ
オレの傘使って?」
「え?」
「ビニールだし
返さなくていいから!」

そう言ってあたしに
傘を持たせる。


「ちょッ…」
「じゃな!
気をつけて帰れよ!」

遠くなっていく背中…


あ…行っちゃう!



「く、空河楽斗ッ!!」


くるりと振り返る
あいつ。


「この傘、使えないよ」
「ああ。わかった」