「この辺で大丈夫です」


「…お前んちこの近く?」


「はい」



ん。

と返事をして、志季がペダルを止める。


志季のお腹から手を離すとき、一瞬だけ名残惜しいような変な気持ちになった。

…いや、気のせいか。



「あ、ありがとうございました」


荷台から降りて、ペコリと頭を下げる。


「…いや、俺がつきあわせたんだし」


心無しか、いつもより口調が優しい気がする。


さすがのドSさんも、それなりに感謝の気持ちとか持ち合わせているのだろうか?

そんな志季に思わず頬が緩みそうになるも、先を恐れて必死に我慢する。




「じゃあ、な」


「はい。また明…」


言いかけて、ハッと思い出した。



そうだ。

私まだ、志季に研修のお礼言ってないんだった……。