……それにしても。

お腹、薄いなぁ。


ひょっとしたらこれ、私のお腹より細いんじゃない?


緊張と興奮の狭間で、ついついそんなことを考えてしまう。


世の中のカップルたちも、二人乗りをしながらそんなことを考えてるのかな……。


って、そしたらムードも何も無いじゃん。




「次、どっち?」


「あっ、右です」


「了解」



志季は、いつになく口数が少ないように感じた。


もっとこう、日頃の鬱憤とか私に対する不満とかぶつけてくるかと思って、それなりに覚悟してたのに。


ますます調子狂う…。




「あ」


二つ目の路地を曲がったとき、見慣れた屋根が視界に入ったので、小さく声をあげた。


家から程近い、協会の屋根だ。