玄関の靴を見ると、どうやら愛梨は帰ってないらしい。 ったく…こんな肝心な時にどこほっつき歩いてんのよ。 苛立ちを覚えながら、友也を追って階段を上る。 「うっ…グスン」 微かに聞こえてくる、健太のすすり泣く声。 よっぽどショックだったんだ。 浮気じゃないにせよ、自分の父親が知らない女と歩いてる現場なんて見たくないに決まってる。 ましてや友也は中2で思春期真っ最中。 難しいお年頃なのだ。 やっぱりここは私が姉らしく、しっかりしなきゃ。 ──コンコン。 「健太ー?入るよー?」