私が自分自身と葛藤している頃、我が家では大変なことになっていたらしい。 「姉ちゃーんっ!」 帰宅するなり勢いよく飛びついてきた弟の友也。 見れば、その円らな瞳にはうっすら涙を浮かべていて。 「ちょ、どうしたの?」 普段あまり涙を見せない友也が泣いている。 これは、ちょっとした緊急事態。 「友也。どうしたの?誰かにいじめられた?愛梨とか愛梨とか愛梨にいじめられた?」 「……」 小さく首を振る友也。 そして、絞り出したような声で、友也は言ったんだ。 「…父ちゃんが、浮気してるって」