「…!」 そっか……。 これが志季の言う、 『私情』 なんだね───。 「……ごめん、なさい」 確かに、感情に任せて周りが見えてなかった。 志季の言う通り、もし他にお客さんがいたら…? 考えただけでもゾッとする。 「…今日はもういいから。頭冷やしてきな。あ、もう冷えてっか」 ─ポン、と私の頭に手を置いて、志季は静かに立ち去っていった。