「お客様。申し訳ありませんがお引き取りください」


いつもの志季からは想像もつかない、落ち着いた声。


「あー!?その女が先につっかかってきたんだろ!」


「…事情は分かりませんが、お客様の行為は立派な営業妨害です」



そう言って志季が、水浸しになったテーブルを指差す。




「……クソ。覚えとけよ!行くぞ亜也」


「え…あっ、うん」



半ば強引に女の手を引いて店を出る豚野郎…じゃなくて龍の後ろ姿を、私はただ呆然と眺めていた。