──…カタン。 志季が立ち上がって、私の元に近づいてくるのが分かった。 思わずギュッと目を閉じる。 「…俺、そんなにお前を苦しめてた?」 「え…」 目を開ければ、今まで見たことのない悲しい表情で笑う志季。 どうして── なんで志季がそんな顔するの? 「嫌だったんだろ?俺のそばにいんのが」 「……ちっ、」 違う。 そう言いたいのに、言葉が出なかった。 だって。 否定は出来ないから。 私はこの関係が嫌だった。 それは事実だもん。