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「ほらぁ、行くよみぃちゃん」
「ま、待って。まだ心の準備が」
「準備に何分かかってんだよ!」
バシッ。
愛梨に背中を叩かれる。
さっきまでのいじらしい愛梨はどこに消えたのやら。
志季じゃないけど、私も幻を見たのかもしれない。
「早くしないと、望さん、帰っちゃうよ」
「…う、うん…」
頭では分かっているのに。
リビングを前にして、どうも足が動かなくなってしまう。
「みぃちゃん、大丈夫。私も行ったげるし」
「愛梨……。愛梨は、再婚について、考えはまとまったんだよね?」
私の言葉に、愛梨は一瞬考えこんだ後、
「うん」
そう力強く頷いた。
──友也も、健太も。
まだ幼い尚人、康、舞も
出た結論は皆同じ。
私は、最後の長女の役目として。
今からそれを、二人に伝えなければならないんだ。


