「み、みぃちゃんの…彼氏?」
豆鉄砲を喰らった鳩のごとく、唖然と立ち尽くす愛梨。
あーあ。
私もう、知らないから。
キッと志季を睨みつける。
志季はそんな私を平然と交わし、
「そうだよ」
と笑った。
──…最悪だ。
学校の皆だけじゃなく、私の妹まで騙すなんて!
「志季先輩、いい加減に…」
「彼氏として、一つだけ言わして」
───え?
突然切り出された志季の言葉に、思わず固まる。
「コイツ…こんなだけどめちゃめちゃ家族想いでさ。自分のことは二の次で、馬鹿みてぇに一生懸命なの」
「志季…」
「……だから。
たまには甘えさせてやって?」
ね?と小首を傾げながら、私の頭に手を乗せる。
「…っ、」
涙腺が緩む。
枯れてしまったはずの涙が、再び潤いを取り戻し始める。
──何で?
どうして?
志季、アンタは──…
どこまでお人好しなのさ……


