ひとしきり泣きわめいたあと。
「……あ、」
思い出したように、愛梨が頭を上げる。
そして、
「こっ、こここ、こっ、」
「こ?」
パクパクと魚のように唇を動かし、目を見開いたまま愛梨は固まっている。
その視線の先を追えば。
「……あ」
すっかり忘れていた。
背後にいる、志季の存在に。
「こ、ここ、この人、誰ェェェ!?」
「愛梨、おちついて」
「だだだだって、イ、イ、イケメン!!」
目をキラキラと輝かせて、大口を開けたまま志季を指さしている。
そりゃあ、志季はイケメンかもしれないけど。
愛梨は確か、B専じゃなかったっけ?
脳裏にポワンと豚野郎の憎たらしい顔が浮かび、私はそれを振り切るようにブンブンと頭を振った。


