「じゃあ、今度こそ帰ります。スウェット、また洗って返しますね」
「うん──…あ、」
「今度は何ですか!」
アンタはどんだけ私を引き止めるんだ。
「ちょー待て。やっぱ送る」
「……へ」
近いからいいですよ、と返す前に、志季は着替えてくる、と再びリビングに引っ込んでしまった。
「もう…何なの」
優しくしたり、からかったり、人を怒らせたり。
分かんないよ志季。
アンタの真意が読めない。
「よし。行くか」
紫のダウンジャケットを羽織った志季が、人差し指でクルクルと鍵を回しながら戻ってきた。
うわ、やっぱ、かっこいいな─…
ってオイ!
何こんなところでときめいてるんだ私は。
「?何だよ」
視線を感じたのか、志季が眉間に皺を寄せて私を見る。
「い、いえ別に」
「お前ねー。視姦禁止」
「なッ…!違っ」
な、な、な、何なの。
視姦って。
それじゃあまるで私、変態みたいじゃん!
あ、変態か。
「バーカ。行くぞ」
フッと笑って、志季の手が私の頭をわしゃわしゃとかき回す。
──トクン。
また、だ。
アンタのその行為がどんだけ私の心を乱しているか、なんて分かんないでしょうね。
「……はー、」
思わず漏れた自分の溜め息に、ついつい苦笑い。


