「じゃあ、お邪魔しました!」
そう言って、ドアノブに手をかけると。
「おい、相澤!」
「え…」
背後から、慌てて志季が追いかけてくる。
何よ。
また忘れ物、とか言ってキスするんじゃないでしょうね。
そう思って振り返る。
「忘れ物」
え、マジ?
またキス?嘘──…
「ほい、制服」
──ガクッ。
思わず首が垂れた。
今の私、芸人顔負けのリアクションだったと思うよ。
「何だよその反応。ははーん、まさか期待した?」
ニヤリと口端を上げながら、あのドSスマイルで私を見下ろす志季。
「なッ!そんなわけないでしょ」
ふん!と鼻息を荒げて志季の手から制服を奪い取る。
ムカつく!ムカつく!
期待した自分が馬鹿みたいだ!
いや、別に期待したわけじゃないけど!


