すると。


「………え」


スッと、志季の手が伸びてきたと思ったら。

ピタ。

それはそのまま、私の右頬に添えられた。



「し、志季先ぱ…」

「まだ痛む?」



小首を傾げ、眉を下げて。

志季が私の顔を覗きこむ。


こんな時でも、その仕草にドキドキしてしまう私。


「…へーき、です」


だから、そう言葉にするのがやっとだった。





「愛されてるよ」

「へ…」

「お前はちゃんと、愛されてる」




───トクン。

胸の奥が、大きく鼓動を打つ。


『ちゃんと、愛されてる』


その言葉を聞いた瞬間、今まで捕われていた何かから解放されたような気がした。



──愛情を求めてた。


守ることで精一杯で、でも、本当はずっと誰かに甘えたかった。

愛してほしかった。


だから──嫉妬した。


お父さんを奪ったあの人に、嫉妬してただけなんだ。