志季は、しばらくウーンと考え込む素振りを見せたあと。


「…聞いていーの?」


そう、小さく問いかけてきた。




……ほら、ね。

本当はずっと、気になって仕方なかったくせに。


バカ志季は優しいから。


私がこうやって切り出すのを、ずっと待っててくれたんだよね──…。



「…聞いて、ください」



話したい。

全部。



志季になら、話してもいいって思えたんだ。


今までずっと、自分の中だけに閉じ込めてきた気持ち。


「話してみ?」


志季が、あまりにも優しい目をするから。

ツンと目の奥が熱くなってくる。



──…そして。


私は志季に打ち明けたんだ。


家のこと。

お母さんの死。

弟や妹たちのこと。


そして…


お父さんと、再婚相手のこと。



責を切ったように夢中で話し出す私に、志季はただ黙って頷いてくれた。


時折、泣き出しそうになる私の頭をヨシヨシと撫でながら。


でも、分かってないよ、志季は。


そんなことされたら、余計に泣きたくなるんだよ?


不器用だけど、本当はすごく優しい志季の手。


それはまるで魔法みたいに、閉じ切っていた私の心の鍵を開けてくれる。