蜜葉が物心ついた頃には、蜜葉の両親は不仲だった。
俺も子供ながらになんとなくそれはわかってた。
母さんが蜜葉に優しいのはたぶんそのせいもあると思う。
ずっと知らなかったんだ。
蜜葉が一人で泣いてたこと。
俺が高校二年の時に、蜜葉の両親の大喧嘩を初めて目の当たりにした。
俺の両親も止めに入ったけどなかなか収まらなくて、俺は部屋に一人でいる蜜葉の様子を見に行った。
ドアを開けてすぐに見えた蜜葉は、耳を塞いで泣きながら震えてた。
そんな蜜葉に声もかけられず、ただ抱きしめることしか出来なかった。
この時かもしれない。
蜜葉が大切な存在だって気付いたのは。
大切だからこそ、傷つけたくない。
この関係を壊しちゃいけないんだ。
蜜葉が安心できる存在でなければいけないって、蜜葉が大切だと気付いた時に決めたはずなのに……。
俺はこれ以上何が欲しいって言うんだ……。
いつだって、なんの言葉も掛けずに泣き止むのをただ待つだけ。


