やべぇ……本当に泣きそうだ。
「……わかったよ、ったく」
俺はため息を吐きながら箸をテーブルにおいた。
「母さん、後で食べるからこのままにしといて」
まだキッチンにいる母さんに言って、蜜葉の手を取り階段を上がる。
パジャマのままだと気付いた俺は、蜜葉を部屋の前で待たせて急いで着替えた。
「ん、入っていいよ」
ドアを開けるとすぐに、蜜葉は抱きついてきた。
「今度はどうした?」
聞きながら蜜葉の頭を撫で、ドアを閉めた。
別にやましいことなんて何もないけど、念のために鍵も掛ける。
蜜葉の腕は背中に回され、簡単には離してくれそうもない。
「蜜葉?」
俺の声に微かに反応して、腕の力がまた少し強くなる。
気付いてた。
蜜葉が泣いてるって。
必死に、声を出さないように。
俺はいつもそばにいるだけで何もしてやれない。
こうやって泣くのは両親のことが原因だっていうのもわかってる。


