父さんが和食好きだから、我が家の朝食にはよく焼き魚が出てくる。
「いただきます」
箸で魚をほぐして一口。
うん、やっぱ薄いな。
「母さん、しょうゆー!」
「忙しいから自分で取りに来て」
「へいへい」
嫌々席を立ってキッチンまで醤油を取りに行く。
「醤油、醤油と。あ、あった」
醤油を片手に再びテーブルに戻る。
かけ過ぎないようにゆっくりと魚に醤油をたらした。
「よし!完璧!!」
食べようと箸を持つ。
その時。
「おばさーん」
と玄関の方から聞こえたのは聞き慣れた声だった。
廊下を走る音が止んだかと思えば、勢いよくキッチンのドアが開いた。
その向こうに見えたのは幼なじみの蜜葉だ。
「あら蜜葉ちゃん、どうかしたの?」
母さんは食器を洗いながら蜜葉の方を見て笑顔を見せる。
蜜葉に優しいって言うか甘いんだよな、母さんは。
実の息子としては複雑だ。


