外は冬の到来を思わせる寒さだった。


行き交う生徒の中、わたしはひとりで歩く。


千歳学園は、家から徒歩15分にある進学校だ。


わたしがこの学校に選んだ理由。


細かいことを言えば、制服が可愛いとか、校舎が綺麗だとかあるんだけど、それらは小さいことに過ぎない。


本当の理由は、学力による特待生枠があること。


特待生になれば、学費が免除される。


要するにお金の節約のためだ。


お母さんひとりの片親で収入も少なく、家計は一杯一杯。


正直、生活はかなり厳しい。


だから、わたしをここまで育ててくれたお母さんを何とか助けたい。


そのために自分なりに考えた結論が、それだった。


勉強なんて大嫌いだけど、必死で努力した。


その甲斐があったのか、何とか特待生になることができた。


特待で合格したと聞いたときの、お母さんのはしゃぎっぷりはすごかった。


どのくらいすごかったかと言うと、中古のマイホームを買ってしまうくらいだった。


おかげで家から歩いて学校に通えるようになったからいいんだけどね。