そう言えば、あたしほとんど歌ってないわ。 まぁ、あんまり得意じゃないからいいんだけど。 「レナ?」 背後から聞こえた声に、危うくグラスを落としそうになった。 恐る恐る振り返ると、もう二度と会いたくなかったオトコが笑っていた。 「あれから俺、何回も電話したんだけどー。 着信拒否しなくてもいいじゃん」 嫌。 近づかないで。 キモチワルイ。 手首がズキズキうずき出した。 カズヤが、ゆっくりと一歩ずつこっちに向かってくる。