静かな闇を切り裂くように、握りしめたケータイからメロディが流れ出した。 絢斗かと思って急いで顔を上げてディスプレイを見ると、パパだった。 「もしもし」 『葵衣、今どこにいるんだ?』 「まだ外」 『今日はママもいないんだから、早く家に帰りなさい。あと春日部くんが会社を辞めるらしいんだが…何かあったのか?』 パパを傷つけたくない…… 「あたし少し前に別れちゃったから、分かんないや」 電話越しのパパの声が詰まった。