Side:さつき


「っ馬鹿!!」

狭い路地裏に入って純君はピタリと足を止めるなり、私の方へ振り向くとそう言い放った。

あの葉月ちゃんスマイルはどこへやら。
もうそれはそれは凄い形相で。

「すいません?」

とりあえず私は謝る。
だけど私は純君が怒っている理由がよく分からないでいた。

「分かってないだろ。」

「へ?」

「だから、何で俺が怒ってるのか分かってないだろ。」

そんな私に、純君は腕を組んで壁に寄りかかりながら呆れたように聞いてくる。
ば、ばれている...。
うん、申し訳ないけど実際私は全くと言って良い程分かってない。

「うん...。ごめんなさい実は分かってな「なら謝んなよ!!」」

言いかけると、純君はすかさず私にツッこんだ。
おぉ、流石純君。

内心純君のツッコミに拍手を送っている私とは正反対に、純君はため息をついて頭をぐしゃぐしゃと掻きまわすと「何で水無月変装してないんだよ!」と言ってまた恐ろしい形相になった。

これか、純君がお怒りになっている理由。