「アツシー!!」

おばちゃんがエリとヒロトをかきわける様に、あっちゃんに近寄ってあっちゃんの肩を揺すっていた。

「…お母さん…もう…」

先生は悔しそうにうつ向きながら、首を横にふっていた。

『やだぁっ…
あっちゃんっっ!!

あこの事置いてかないでぇーっ!!』

あっちゃんの手にはもう力なんか残っていない。

でも、握り返してくれる事をひたすら願いながら、きつく握り締めた。

ピィ―――――――……………


『えっ…やだっ…やだぁっ!』

病室の中に居る全員の視線がモニターへと向けられた。

緑色の波を打っていたはず線が一本の棒に変わった。

表情されている数字。
“0”

あこの頭の中が真っ白になっていく。

先生はあこからあっちゃんの右手をそっと奪うと、あっちゃんの細い手首に指を当てて、腕時計を確認した。

あこは涙も流さずに、先生の流れ作業から目をそらさずに睨み続けた。


先生はあっちゃんのだらんとしている力の抜けきった腕を、ベッドの上にそっと置いた。

カチッ…

先生があっちゃんの閉じている目を無理矢理指で開けて、ペンライトの光を照らす。

カチッ…

ペンライトの灯りを消した先生の目には涙がうっすらとにじんでいる。

「…残念ですが…

午後2時12分、ご臨終です…」


ガクンッ…

先生の言葉を聞くなり、足から全ての力が抜けてしまった。

感情が込みあげる。

『…あったかいよ!?
先生ぇっ!まだ、あっちゃんの手があったかいんだよっ…!!

…いやぁぁぁぁっ!』