湯からあげた輪は、まったく濡れておらず、水滴をしたたらせることもなかった。 不思議物体。 黒の魔王さまが、 輪をあちこちの角度から眺めていると、 やがて輪の輝きと輪郭が薄くなり、 無数の小さな光りの粒になりながら、空気に溶け込むように消えた。 「消えちゃった」 魔王さまが言うと、ヘナは幾つでも出せますよと、手からまた輪を出した。 ふたつ、みっつと続けて出し、黒の魔王さまに渡す。 「あはっ、いっぱい」 ヘナは、さらにもうひとつ出し、自分の頭の上に浮かせて見せる。