落馬した庄左右衛門にとどめを刺そうと緊那羅(きんなら)は近づいた。

 背中から落ちた庄左右衛門は、腹の傷を押さえて慌てて槍を握った。
「武田のくたばりぞこないめが!地獄へ行け!」

 その時、境内の中頃に歩いて近づいてきた善吉が緊那羅の目に入った。善吉が右手の竹を緊那羅の方へ突きだした!飛鳥の声とも思える気合いが鼓膜を震わせた!

「喝!」

「うぐっ!」
 善吉が目の前に来た様な気がした。
 八艘に刀を上げた身体が一瞬動かなくなった!

「庄左右衛門様!」
 振り向くと八艘に構えた静音が駆け込んでくる!
「うぬ!」

 斬られても骨を断つ!緊那羅は静音の顔に向けて、肩を廻して太刀を水平に振った。だが、善吉の気合いで心が落ち着かず、振るその剣は達人のものでは無かった。
 それが静音に当たる寸前、ふっと静音は消えた。下に沈み込んだのだ。

 後ろから庄左右衛門の槍と、前から静音の剣が、緊那羅の腹に刺さるのが同時であった!