離れた唇から聞いた言葉で、私はますます体温があがった。
今計ったらもしかしたら40度越えているかもしれない。

満足そうに、かつ余裕そうに笑うヤツの口元が憎い。
私が死にそうになっているというのに、なんて男なの。



「ま、海外では男が女にプレゼントを渡す日だからな」



顎が解放され即座に顔を逸らすと要冬真はそう言いながら背中を引いて伸びをした。
少しだけ、疲れているのだろうか。

朝から女の子に囲まれ、休み時間も囲まれ、やっと静かな時間を過ごしているのだと思う。
先ほど彼から貰った小さな箱を見下ろした。
綺麗にラッピングされた清潔感のある白い包装紙。

なんだかくすぐったくて、すごく嬉しい。


海外では男が女にって…どっかで聞いたような…。

変な所で海外かぶれやがって!

まぁ嬉しいからそこまでは言わないけど。



「でもここは日本だよ」




なんとなく照れ隠しでそう言った瞬間、要冬真の空気が変わった事に気付いて息を呑んだ。
雰囲気が悪くなったとか、怒ってるとか、そういうんじゃない。
また、人をおちょくるときのような笑顔が、私を覗き込む。

やば…、完全に失言した…。



「ほう、じゃあお前はその日本の風習に従って何か俺様にプレゼントしてくれるわけだ」


「いや…、あの…」




「こっち向けって」




ひぃ!
なんか二人しかいないからって本領発揮してない?
怖い!
心臓に悪い!



「えっと…、じゃああの、帰りにデパート行って何か買って…」


「今」

「…は?」



「今欲しい」




少しずつ近寄ってくる影に少しずつ後ずさる。
さっきの久遠寺くんの二の舞じゃないの!
座っている事が幸いしてお尻だけで何とか後ろへ下がるが、背中に肘置きがぶつかり逃げ場が無い。

近い近い近い!


動悸がする指が痺れる顔が熱い!
キメの細かい白い肌が眩しくて目を細める。


「いいいい今って、今持ってるのなんて何にも…」