『“ふっははは!ショックで声も出ないだろう!姐さんからバレンタインチョコが貰えないんだからな!”』



『貴重な情報ありがとう』



『“し…しまったぁぁ!”』





「マサのヤツ!なんつー恥ずかしい事を!大体電話番号なんて何時の間に交換したの!」





「年末お前の実家に帰っただろ。その時だ」



確かに二人で金白村に帰ったけど、本当に何時の間に。


妙な事して何コイツに喧嘩うってんのよあのバカ!





「だから、これは俺様からのバレンタインチョコレートだ」




彼は大きな目を細めて、溶けるような笑顔を見せる。
頭に触れていた手が肩に下ろされ、黒目がちな瞳の暖かさに体が大きく波打った。

痛いほど早打ちする心臓が、指先が痛い。



“バレンタイン”という決められた日に、好きな人からものを貰う事がこんなに嬉しいなんて。



だったら私は、尚更彼に何かを渡したかった。


そんな申し訳なさも込めて顔をあげると、要冬真は思い出したように優しかった口元を意地悪そうに緩める。


変化した笑顔に、何故か嫌な予感がした。



「お前は、俺が色んな女からモノを貰ったと言ったが…嫉妬か?」





げっ…






「嫉妬…じゃ、ない…」

何とか反抗するが、要冬真は完全に聞いてないようだ。


「まぁいい、よく聞いておけよ」



彼が気まずくて顔を逸らした私の顎を下から掴み、横に向けた。
至近距離で視線が絡み合う。
長い前髪が揺れて覗く瞳に捕まって心臓がまた跳ね上がった。



「俺はモテるから色んな女からモノを貰うのは当たり前だ。そうだろ?」




う…



うぜー!




「だがな」




偉そうに笑っていた要冬真の口元が突然真面目になる。

また、その表情に胸が高鳴った。
私は、いつだってこの人には弱い。
赤く腫れた体は触れられた所から広がっていくのが手に取るようにわかる。




「俺が何かをくれてやるのは」


暖かい感触は、何度交わしても慣れない。




「お前だけだ」